Back Light Museum

日頃のこととかを時々ぼそぼそと

16/7/25 スプツニ子!さん講演と『桃太郎 海の神兵』

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多摩美でスプツニ子!さんが講演をした。

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スプツニ子!さんの講演では、問題を模索、提起するデザインである、「スペキュラティブデザイン」について教わりながら、最近の作品についていろいろ聞けた。
 
セドリック・プライスの移動式大学の話しが面白くて、教育を得るためには都心に出ないとダメなのか?その土地で受ける教育を提案されてて、
自分は福岡から何かここ(東京)に得るものがあるかも。と思って上京したけど、今こっちにいるからこそ福岡の魅力にも気づいたりして。
でもやっぱり東京は機会だったり、情報だったりが圧倒的だから、それが地方にも振り分けられる仕組みはすごい欲しいなと感じた。
 
あとはSNSの時代に、他の人が言ってることを自分が言ってると勘違いしちゅうひとが多い。咀嚼して、自分の意見を持とうと。
うーん、なっとく。自分もその節があるので気をつけねば。
 
スプツニ子!さん、自分のプレゼンの際に前傾姿勢で、ハキハキしゃべっていらっしゃって、
すごい伝えようという意思を感じました。素敵だな、強いなとすごいなと思った。
 
あとはこの対談が学生によって企画されたのがすごいよね、そんなことできるんだ。
ぼくも多摩美でやってみたい企画講義たくさんあるよ。
90年代、日比野克彦以降の表現のグラフィックデザインのこととか、エンブレムのけん、多摩美で話すのもおもしろいよ、うすらグラフィックだってしたい。これを多摩グラで出来るのか?やってみたい、すごい興味ある。
 
 
それから、「桃太郎海の神兵」という映画を渋谷で見てきた。
1945年4月公開。海軍陸軍の落下傘部隊の作戦を元に製作された少国民に向けての国策プロパガンダ映画。

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物語はのどかな自然の風景から始まる。戦地から帰ってきた海兵たちが、村に帰ってくる。村のこどもたちと戯れながら、のどかで安らかな時間をすごす。
たんぽぽの綿毛が空を舞う光景とパラシュートの落下傘が空を舞う光景がフィードバックして、戦地のシーンが始まる。
 
国策のプロパガンダ映画で国が主体となり予算や人員などが用事されたとはいえ、戦時中の日本映画。ぼくもYouTubeで幾つかこの系統の映画を見たことはあるが、作品の質が低かったり、内容がひどかったり、(ストーリー的にも、米兵の扱い的にも)するものが多いけど、特に前半のシーンは美しくて、なめらかではないにせよ、しっかりと動きの描写された彼らたちには本当の命がやどっているようで、
 
中盤からは戦地での物語に、兵士たちの生活から、隊長の桃太郎がやってきて、本番までの準備、そして本番の奇襲攻撃の様子が描かれる。
ここでも感動するシーンがいくつかあって、
まず奇襲攻撃当日の朝日が昇りはじめぐらいの逆光表現?美しかった。兵士としての心に秘めたるいろんな思いがなんかこみあげてくるよね。
あとびっくりしたのが、雨水の表現。日本は輪郭線の文化で浮世絵とかも輪郭線で雨水を表現したとこに素晴らしさがあるとおもうんだけど、ここではすべての雨水が立体的な水滴として表現されてることにびっくりした。(海外のディズニー映画の影響受けたりしたのかな?)
 
そして落下傘で兵士が落下していくシーンね。美しいんだよ。本当に綺麗。すごい丁寧に描写されてて一瞬だけど、すごいんだよ。ここらへんは多摩美教授の竹熊さんが漫画文化論で話すとこだね。
 
あとは奇襲が成功して、米兵たちが降参する瞬間にトランプが地面にちらばるシーンがあるんだけど、そこで最後にひらひらと地面に散るのがキングのカードなんだよね。当時世界で一番強かったキングの陥落。表現の仕方が素晴らしいな。
 
っていろいろ話してきたけど、これは少国民の戦意を高揚させるために作られた映画だってことを忘れちゃいけなくて。
 
この映画に出てくる日本兵は隊長の桃太郎以外すべて動物で。猿やウサギや鳥が戦闘機を飛行したり、爆弾をなげたりする。しかもそれを指揮するのは桃太郎。
トークイベントで小野耕平さんが言ってた「おとぎ話の主人公が戦争に駆り出されるという悲劇。」当時の日本軍の切羽詰まり具合が露骨に現れてるとも思う。(ちなみにやられる米兵の中にはポパイがまじってたりもする。)
他にも米兵と日本軍の話し合いの場面での明らかに米兵を見下した描き方、喋り方してるとことかすごいイライラする。
 
でもこの映画はやっぱり美しくて、監督の瀬尾さんもプロパガンダなだけの映画にしようと思ったわけではなく、やっぱり映画のメインを締めるのは生き生きとした、子ども達を笑顔にさせるようなのどかで優しく、そして美しいシーンの数々。
この映画を大阪で見た手塚治虫は感動して、「この作品を見てこんなアニメを作ろう」と思って、後に日本のアニメの新しい歴史をつくっていくのです。
戦争の映画とはいえ、ここに溢れるイメージのほとんどは反戦そのもので、どこか宮崎駿の『風立ちぬ』を思い出させたりもします。飛行機が好きな堀越二郎は飛行機が好きで好きで,戦争の兵器として使われる事が分かっていても、彼は作る事をやめなかった。瀬尾さんもやっぱりアニメーションが好きだったんだろうなって。作る事をやめられなかった。でもそのなかでも出来うる限りの自分の表現者としての信念や想い、そんなものがにじみ出た、そんな伝説の映画だと感じます。
 
戦後70年を経て、デジタルリマスターで復刻されたこの映画、改めて現在に見る価値のある映画だと思います。
YouTubeでも観れるんだけど、映画館で観る画質は本当に綺麗です)
 
ってことで、久々にたくさん語りたかったからブログ更新でした。